連載 特集

農林漁業部会特集 19年度 第2回 IMO規制対応と適合油・周辺油種への影響 ①

2.IMO規制スタート

〝適合油〟流通が本格化
 周辺油種動向に高い関心

 海運における大気汚染の防止などを図るため、日本を含む世界の一般海域で船舶用燃料油の硫黄分濃度規制を従前の3・5%以下から0・5%以下に低減することを海洋汚染防止条約(マルポール条約)で採択した国際海事機関(IMO)の方針に沿い、今年1月1日から“適合油”の供給が義務付けられ、流通が本格化している。これに先立ち、元売各社は昨秋ごろから順次、適合油の供給を開始。需要家側・供給者側はそれぞれ情報収集や実証事業などを通じ、円滑な移行に備えてきた。世界的に新たな規格の適合油が市場に流通することで、周辺油種の供給量や価格がどうなっていくのかに強い関心が寄せられている。今年度の農林漁業部会特集第2弾では、規制開始前後に生じている変化、注目点、課題、今後の見通しなどを探る。

環境規制の強化に合わせ、適合油の本格的な供給が始まった
環境規制の強化に合わせ、適合油の本格的な供給が始まった

【適合油・スクラバー対応反映】
 品確法へ諸規定加える


 船舶用燃料油の硫黄分濃度を0・5%以下とすることを定める品質確保法の改正省令が昨年11月29日に公布され、今年1月1日から施行された。品確法は販売業者や生産業者などに品質確認等の義務を課しており、船舶用重油の規定はマルポール条約に係る国内担保措置として、05年の改正時に品確法に追加された。
 IMO規制に対応するためには、①適合油やA重油の利用②排ガス浄化装置(スクラバー)の設置③代替燃料(LNG)への切り替え|などが必要となるが、②の手段を採用した場合には今般の硫黄分濃度規制強化は適応されないことから、重油規則の特則が新たに設定されている。スクラバー設置の確認にあたり、重油販売業者等は船舶に設置されている「海洋汚染等防止手帳」などの書面を確認することとされた。
 一方、適合油の使用を免除された船舶への燃料供給に係る特則として、マルポール条約では、必要な措置を講じても適合油を入手できなかった場合は、適合油の使用を一時的に免除される規定があり、国内担保措置は海洋汚染防止法で「基準適合油入手不可通報=FONAR(フォナー制度)」に規定されていて、今般、詳細な手続きを定める同法施行規則に定められることになったことから、品確法においても対応する規定を措置した。
 ただ、日本でフォナー制度が利用されるのは、非常に稀なケースになるなどと見込まれている。新規制への移行を踏まえ、資源エネルギー庁では品確法施行規則の改正省令に関するQ&Aを昨年末に用意し、円滑な対応をサポートしている。