北海道 特集

【2020 新年特集】 北海道特集 電気、ガスが止まったら…冬の防災に備える

 大きな自然災害の発生が相次ぐ日本列島。一昨年9月の「北海道胆振東部地震」は、国内初となるブラックアウトを誘発し、離島を除く道内のほぼ全域が停電したことから道民の生活に大きな影響を与えたが、「もし、真冬に同じような事態が起きたら…」と考えると恐ろしい。冬期の災害時に欠かせないのは第1に暖房。石油連盟北海道石油システムセンターに、災害に強い機器を中心とした最新の石油機器を紹介してもらった。

ホームタンクからポリ缶への給油が簡単にできるホクエイの「こぼしま栓」
ホームタンクからポリ缶への給油が簡単にできるホクエイの「こぼしま栓」

大停電で防災意識浸透
芯式ストーブが需要拡大

 日本ガス石油機器工業会によると、胆振東部地震が発生した2018年9月の1ヵ月間で、道内における芯式ストーブの出荷台数は4万4951台に上った。17年1年間での出荷台数3万3381台を上回る台数で、この後しばらく、ホームセンター(HC)などの店頭では品薄の状態が続いた。
 北海道のような寒冷地では、一般的に石油機器は設備型のFF式石油暖房機が使われているが、このタイプは電源が必要で、停電時には使用できない。一方、芯式ストーブは持ち運びが可能で、電池や着火ライターで点火できるので災害時にも暖を取ることができる。そのため、ブラックアウトを実際に経験した道民の防災意識の高まりから、道内での芯式ストーブの出荷が増えているという。
 北海道石油システムセンターの横田雅幸所長は、このタイプでは「トヨトミの『レインボー』が人気」と推奨する。「ランタンのような見た目で、キャンプにも使える。特にアウトドアをする人がネットで購入するケースが多いようだ」。
 また、電池も要らずに手回しで着火できる「ぐるんPa」も安定して売れている。トヨトミは昨年、これとレインボーを融合させた「レインボーぐるんPa」を新発売。まだHCなどの店頭にはあまり出回っていないようだが、これからの売れ行きが期待されている。
 設備型のFF式石油暖房機でも、停電時に使用できるタイプも出てきた。「サンポットが開発した『停電自立防災型FF式石油温風暖房機』は停電時でも最大で約17時間運転できる。これは避難所などに向いた業務用タイプだが、一般家庭向けも開発している」(同所長)。
 芯式などのポータブルストーブを準備していても、灯油の在庫がなければ災害時には使えない。道内の戸建て住宅のほとんどにはホームタンクがあるものの、これから灯油をポリ缶に移し替えるのは意外と難しい。こうした事態に備えて、全石連は北海道でも『満タン&灯油プラス1缶運動』を道石油システムセンターの協力も得ながら展開している。
 ただし、ホクエイの「こぼしま栓」があれば、だれでもホームタンクからポリ缶に灯油を給油することができる。電池も要らず、自動ストップ機能がついているので流出事故の不安もない。「2~3年前から売られているが、まだ知らない人が多い」(同)。定価は1万6千円(税抜き)。1本備えていても損はないのでは。

石連と自治体訪問
災害に強い石油機器PR

  道石油システムセンターは2011年度から、道内18地方石協と協力して各自治体を訪問。災害に強い石油と石油機器の平時からの使用を提案する活動を続けている。
 この活動が実を結び、提案が受け入れられた事例が名寄市役所の灯油エンジン発電機(デンヨー)。14年8月に見舞われた未曽有の豪雨の経験などから、災害時の対応拠点となる市庁舎総務部の緊急用バックアップ電源をどうすべきか考えていたタイミングでの提案となり、市は導入を即決した。一昨年のブラックアウト時にも対策本部となった総務部のパソコン、コピー機、LED照明の電源を賄えたという。
 災害時に避難所を開設しなければならない自治体からは、「煮炊き兼暖房用バーナー」(トヨトミ)に関心が集まっている。停電時には発電機や車載バッテリーなどの電源が必要になるものの、煮炊きではカップ麺100杯分のお湯を約25分で沸かすことができ、暖房では遠赤外線で広い場所を温めることができる優れもの。
 稚内市では一昨年8月に宗谷地方石協の菅原耕理事長(瀬戸漁業社長・JXTG系)から、一個人としての寄贈を受けた。市は同9月1日に開いた「ふくしフェスタ」でこれを使って100人分のカレーを調理。火力は風にも影響されることなく、屋外でも役に立つことが検証できたが、奇しくもその5日後に発生したブラックアウトでは、幸いにも出番はなかった。

一般家庭向けは年々進化

 「新しいものが出てこない。展示会の商品はいつも同じ」。消費者からこんなクレームが石油システムセンターに届いたことがあったという。しかし、「一般家庭向けの石油機器も年々進化している」と越後屋隆マネージャーは胸を張る。
 例えば、ダイニチの「石油ファンヒーター」。今冬に向けた新製品には、35秒でスピード着火できる機能を搭載している。ポータブルのファンヒーターは、設備型のFF式石油暖房機が主流の道内家庭では普及が遅れているが、「我が家では各部屋でこれが活躍している」(同)。
 FF式でも高級感のあるデザインのアンティーク調暖房機(トヨトミ)が女性の支持を受けている。薄型で先進的スタイルを持つ遠赤外線パネル搭載の「アグレシオ」(コロナ)、「ゼータスイング」(サンポット)も省エネ機能が評価されている。
 省エネ型給湯・暖房ボイラー「エコフィール」は、「音の静かさ」や「灯油の臭いの低さ」などの満足度が高く、導入する家庭が着実に増えている。「エコフィール」を取り扱っているのはコロナ、サンポット、長府製作所、ノーリツの4メーカー。長府製作所の「自立防災型エコフィール」は給湯エコフィールにバッテリーを組み合わせ、災害時などで長時間停電になっても、4人家族が1日1回3日間、シャワーを使うことができる。バッテリーにはコンセントもついているので、スマホの充電などにも使用できる。