論説

災害時の期待に応えるために

 2019年度補正予算と20年度当初予算を合わせた石油流通関連予算は277.8億円となった。今月20日から始まる通常国会でそれぞれ審議され成立する見通しだ。予算規模としては、東日本大震災による復旧関係予算が積み増された11年度、12年度に次ぐ過去3番目に多い額となった。昨年8月の北部九州豪雨災害や台風15号、19号、20号、21号に伴う一連の災害を踏まえ、一昨年から政府が取り組んでいる「防災・減災、国土強靭化のための3ヵ年緊急対策」の最終年度分の予算が追加されたものである。
 この予算の最大の特徴は、災害時に備えた地域でのエネルギー供給拠点の整備事業費として200億円もの予算が投入されたことである。熊本地震を機に10分の10の補助率で整備が始まった住民拠点SSは今年度末までに7千ヵ所に達する予定だが、これをさらに約8千ヵ所追加整備してトータル1万5千ヵ所にする。
 さらには石油組合などが行う災害対応実地訓練や、自家発電設備の点検研修のための予算、住民拠点SSの保有在庫量を増加するための地下タンクの入れ換えや大型化するための支援予算、災害時に病院などの重要施設の自家発電設備や電力会社の電源車などに燃料を供給するための緊急配送用ローリーも約300台程度配備するための予算を計上した。
 そして、新たにメニューに加わったのが自家発電設備を設置していないSSの災害対応を支援するために石油組合などへの可搬式給油機の配備である。昨年の台風15号で房総半島が長期停電した際に、住民拠点SSなどがない地域のSSに可搬式給油機を持ち込んで燃料供給を行ったことからこの配備事業を強化することにしたものだ。
 たび重なる大規模災害を経験して、常に停電への備えが必要不可欠であることが明らかになった。その際には自力で供給することができる分散型燃料供給拠点であるSSがなによりも必要であることが認識されたということである。
 今回の補正予算と当初予算で8千ヵ所の住民拠点SSを追加整備することになるが、そのためには、全国の石油組合とその組合員の理解と協力が必要だ。地域に根差すSSが、災害時の「最後の砦」として「なくしてはならない社会インフラ」になるためにもこの期待に応えなければならない。