【2020 新年特集】 北海道特集 優先供給前提条件『平時からの配慮』の実態
北石連(伊藤豊会長)が北海道と「災害時における石油類燃料の供給等に関する協定」を締結したのは2011年12月。これを契機に各自治体も関係地方石協との連携強化に動き、昨年9月末までに全179市町村のうち155市町村が災害時協定の締結を済ませている。しかし、優先供給の前提条件になる「平時からの配慮」を十分に受けていると感じる組合員はどれほどいるのか。今後の道の取り組みについての見解を引き出した決算委員会の様子を紹介する。
■団体政策懇談会■
道議団に窮状直接訴え/受注機会「特段の対応」を要望
北石連の河辺善一副会長(道油政連会長)と前川正一専務理事は昨年10月7日、自民党道連が北海道議会庁舎で開いた「団体政策懇談会」に出席。災害時協定を締結している道の各部局・機関による平時からの配慮がなかなかみえてこない官公需問題について要望した。
自民党からは田中芳憲道連政調会長はじめ道議会議員11人が出席した懇談会で、北石連執行部がこうした会議で道議団に業界の窮状を直接訴えるのはこれが初めて。
河辺副会長はまず、一昨年の胆振東部地震とそれに伴うブラックアウトで各地の組合員SSが的確に災害対応したことを強調。そのうえで官公需問題に言及し、「日ごろ付き合いのない中で、災害時だけ燃料を持って来いと言われるのは理不尽」と述べ、平時からの調達の実現に向けて協力を求めた。
引き続き、前川専務が胆振東部地震での石油販売業界の対応を詳しく説明し、全国各地の石油組合が自治体などと取り組んでいる官公需関係の好事例を紹介。さらに、教育局関係などの一般入札で地元外業者が落札するケースが相次ぐなどといった道内での官公需の実態と課題を説明したうえで「SSが地域の防災拠点としての役割を果たしていくためにも、災害時協定に参加している組合員の受注機会確保について特段の対応を願いたい」との要望(別掲)を読み上げた。
これに対し、田中政調会長は災害時協定と官公需がセットになった仕組みについて「理解した」と述べ、「それぞれの議員がこの要請を地元に持ち帰り、議論のベースに活用していきたい」と今後の検討を約束した。
【官公需に関する北石連からの要望】
〇私ども石油販売業者が供給を担う灯油やガソリンなどの石油製品は、道民の方々の生活や地域の産業になくてはならない正に地域のライフラインであり、常日ごろから社会的使命を痛感しながら安定供給に万全を期しているところ。
〇東日本大震災の経験などを踏まえ、当連合会は北海道との間で「災害時における石油類燃料の供給等に関する協定」を締結し、道内で災害が発生すれば、傘下の事業者が緊急車両や災害対策上の重要施設、避難所、医療機関および社会福祉施設などへの優先供給のほか、帰宅困難者や被災者などに対し、SS施設や災害関連情報の提供などの支援を行うことになっている。
〇しかしながら、石油販売業者のほとんどは、経営基盤のぜい弱な中小企業であり、近年は大変厳しい経営環境などから廃業に追い込まれるケースもあり、また、現在営業を続けているSSについても経営状況は極めて厳しく、先行きに不安を抱えながら事業を続けているというのが実態である。
〇ついては、国の方針である「中小企業者に関する国等の契約の基本方針」が大幅に改正され、「石油組合が国または地方公共団体との間で災害時の燃料供給協定を締結している場合には当該協定を締結している石油組合および当該協定に参加している中小石油販売業者の受注機会の増大に努めるなど、中小石油販売業者に対する配慮」が明記されたところ。北海道においては、これまでも北海道と防災協定を締結する中小企業者などに対して種々配慮をいただいているところではあるが、道内における種々災害などに対する万全を期した対応をするためにも平時における燃料調達について、国の基本方針に沿った配慮を賜りたいと存ずる。
〇SSが地域の防災拠点としての役割を今後とも果たしていくためには、行政の支援が是非とも必要であり、防災協定に参加している参加組合員の受注機会確保について特段の対応をいただけるよう改めてお願い申し上げる。
■決算特別委員会■
随意契約実績が極めて少額/鈴木知事の見解要求
団体政策懇談会で北石連の要望を聞いた自民党道連は、即座に行動に出た。約1ヵ月後の昨年11月13日に開催された道議会の決算特別委員会で、自民党・道民会議の佐藤禎洋委員が質問に立ち、道と災害時協定を締結している北石連の組合員に対する配慮について説明を求めた。佐藤委員は随意契約実績が極めて少額にとどまっていることなどを指摘し、この問題に今後どのように取り組むのか知事の見解を要求した。
佐藤委員はまず、災害時での燃料調達を確保するための販売業者との災害時協定の必要性を述べたうえで、道が災害時協定を結んでいる北石連と傘下18地方石協の組合員に対する具体的な配慮について説明を求めた。
契約実績について道は、各地方石協との随意契約実績が2018年度内で6件、約6万円の少額契約に過ぎなかった状況を回答。佐藤委員は県や国の機関と災害時協定を締結し、随意契約で燃料供給をしている佐賀石商の事例を紹介し、同様の取り組みができないのか見解を求めた。
この質問に対し道は、佐賀県の事例について「県石商傘下のSSが県内全域をカバーし、給油の利便性が高いことなどを理由として、県の燃料供給を一括で同組合と随意契約していることを承知している」としたものの、「石油組合との随意契約については事業執行部局の判断に委ねられている」と答えるにとどまった。
引き続き、佐藤委員は北石連、地方石協、組合員との平時からの随意契約を含めた継続的な燃料調達の重要性を強調。そのうえで、災害時の安定的な燃料油確保に向けての今後の対応を質した。
道の答弁では、北石連との平時からの連携強化を進めていることを説明。「事業執行部局に対し、協定の重要性に関する理解促進や推進方針の周知・徹底などを通じてこうした事業者への配慮に働きかけていく」と述べた。
佐藤委員は道の取り組みが「従来とあまり変わらない」と指摘した後、「この件に関し、具体的にどのように取り組むのか」と改めて知事の見解を要請した。
■決算特別委総括質疑■
鈴木知事・事業執行部局へ通知発出/災害時の安定供給に努める
佐藤委員が知事の見解を要求した決算特別委員会から約1週間後の11月21日。道議会の決算特別委員会総括質疑が行われ、今度は自民党・道民会議の清水拓也委員が質問に立ち、鈴木直道知事の答弁を求めた。
清水委員は前回の佐藤委員の質問に対する道の答弁で、道関係では国や他県の例でみられるような災害時協定を結んでいる業界団体と一括して随意契約を行うケースが極めてまれであることが明らかになったことを指摘したうえで、「今後も予想される自然災害に備えるため、従来の分離分割発注方式に加え、国や他県で進められているような石油組合などとの随意契約による平時からの安定供給体制構築に取り組むなど、(中小企業の受注機会確保)推進方針の運用を見直す考えがないのか」と質した。
これに対し知事は「今後、災害時協定を締結している事業者について契約実態を調査するとともに、庁内連絡会議を通じて、協定の重要性を改めて説明し、法令等との整合性を確保しつつ、官公需適格組合である事業者との随意契約の検討を促すほか、事業を執行する各部局に対し、その旨通知を発出するなど災害時の安定的な燃料供給の確保に努めていきたい」と答弁した。
引き続き、清水委員は、実際の災害発生時に住民の避難誘導や消防活動などを担ったり、避難所を開設したりするのは市町村であることを指摘。そのうえで、知事の答弁にあった道の対応方針などを市町村にも示して、それぞれの地域での燃料供給体制強化を促すことを要請した。
再び答弁に立った知事は、昨年9月末までに道内全179市町村のうち155市町村が地元の地方石協などと災害時協定を締結している状況を説明。また、災害時に協定を締結している中小組合員が供給能力を十分発揮できるよう、市町村に対し、道の推進方針や国の基本方針を周知して「これらの事業者への受注機会の確保・拡大について配慮を要請してきた」と強調。今後の対応としては、「市町村の取組状況を把握しながら、庁内に発出する予定の道の通知の考え方などを示すなどして、協定を締結する中小企業の受注機会の確保や拡大を通じ、災害時の安定的な燃料供給の確保が図られるよう、努めていく」と述べた。