中部・愛知 特集

【2020 新年特集】 中部特集 〝最後の砦〟守り固めて

 全国各地で相次いでいる地震や豪雨などの大災害――。その惨状を目の当たりに中部6県もいざという時に備え、中核SSや支部組織を中心に訓練を積み重ねている。東日本大震災から間もなく9年。中核SSや小口配送拠点だけでなく、行政支援で災害時に燃料供給拠点となる「住民拠点SS」の整備が急ピッチで進む中、〝最後の砦〟としての役割を果たそうと実地訓練などに力を尽くす各県石商の最近の姿を追った。

道路復旧の重機にローリーから緊急給油の訓練を行う愛知の組合員
道路復旧の重機にローリーから緊急給油の訓練を行う愛知の組合員

【愛知 県総合防災訓練へ参加】
 愛知石商・協(宇佐美三郎理事長)の災害訓練が強化されたのは2年前、県総合防災訓練に初参加したのがきっかけだった。県と組合とは東日本大震災より以前の2005年に災害時協定を締結。しかし、豊橋、一宮、稲沢、田原など組合の各地区協が地元市町の防災訓練に毎年加わって石油の供給力をアピールする中、県主催の大がかりな訓練への参加はなかった。
 この流れを変え、同石商として初めて訓練に参加したのは2年前だった。宇佐美鉱油本社の津島市が訓練会場だと知った同理事長が、参加を決断。同石商役員や地元組合員、石油連盟とともに災害時であってもしっかりと対応する石油組合の力を、自衛隊や国・県の関係機関、住民ら約4千人に知らしめた。
 昨年9月には2年連続で参加。南海トラフ巨大地震の被災地と想定されている豊橋市での県防災訓練にタンクローリーなどを出動させ、被災地域でフル稼働する中部電力の電源車や、道路復旧にあたる重機への燃料緊急供給、さらに携行缶で災害対策本部にガソリンを補給する訓練を手際よく紹介。石連とともに災害に強く経済性の高い灯油機器展示や、『満タン&灯油プラス1缶運動』への理解を訴えた。県知事や地元市長もこうした同石商の訓練現場を視察し、石油の力を再認識するなど、同石商にとって訓練参加の意味は年ごとに強まっている。
 なお、同石商では、今年度の本格的な実地訓練を今月末、稲沢市の中核SS・金源井上商店給油所(キグナス系)で予定している。

【三重 高速SSで初演習も】
 三重石商・協(亀井喜久雄理事長)は行政が行う災害訓練などに積極参加する一方、組合独自の実地訓練などに力を入れている。
 紀伊半島の先端に近い紀宝町からリアス式の志摩半島を経て伊勢湾奥部の桑名市まで至る長い海岸線の同県は、
南海トラフ巨大地震に備え防災への取り組みを強化。県下6ヵ所に避難所機能を備えた大規模な「広域防災拠点」を設置。支援物資の受け入れやその配布方法など、いつ災害に襲われても対応できる態勢を強化。同石商は、その防災拠点に石油燃料を供給する訓練を行ったり、東名阪のSA給油所でNEXCO中日本の緊急車両に高速道路で初の給油訓練を実施した。さらに中部で唯一コンビナートがある四日市市を中心にした「津波訓練」では、港に接岸した海上保安部巡視船にローリーから直接緊急給油。
 また、名張市の亀井商事給油所(JXTG系)で行われた中核SSを停電状態にしての初めての実地訓練。さらに昨年10月には伊賀市の中核SSである堀川商店給油所(出光昭シ系)における訓練にも、近隣の住民拠点SS従業員ら大勢が参加。非常用発電機を手で稼働させる体験などに汗を流すなど組合を挙げて災害に備える。

【岐阜 中核SSの対応実地研修】
 岐阜石商・協(澤田栄理事長)は、岐阜支部が中心となり毎年参加している岐阜市の総合防災訓練に力を入れる。昨秋は大被害をもたらした台風19号の後に訓練が実施されたため、救援物資輸送を予定していた東京・調布市が不参加となり、県防災ヘリや自衛隊の炊き出し部隊も被災地に出動していて参加が見送られるなど、予定変更で例年以上に緊張した雰囲気での訓練となった。災害時にガソリンや灯油を供給、被災民を助けるため石油組合と行政とが災害協定を締結していることなどが場内アナウンスで流される中、地元組合員のローリーが「緊急生活用燃料搬送」の横断幕を張って会場を一周。出動隊の隊長で支部役員の河村末廣・同石商副理事長が訓練本部に燃料到着を報告し訓練を順調に終えた。
 また、川辺町の中核SS・丸栄石油給油所(出光昭シ系)で一昨年初めて地震による停電状態を想定しての本格的な実地訓練も行った。余震に注意しながら店内の被災状況を確認。店内の分電盤ブレーカーをオフ状態にし、非常用発電機を運び出し手動で稼働、計量機に通電させ地下タンクから燃料を汲み上げ、駆け付けた緊急車両の消防車に給油する一連の訓練を順調に実施した。この実地訓練は、今年度も今月末、関市の住民拠点SS・山西石油(JXTG系)で近隣の組合員や従業員らが参加して行う。

【富山 海自と平時から連携】
 「災害時だけでなく平時からの燃料供給、受注機会の増大で地域のSSを守る」という協定の趣旨を実践し、成果を上げているのが富山石商・協(島竜彦理事長)。とりわけ、災害時に船で物資輸送など海からの支援に力点を置く海上自衛隊舞鶴地方総監部(舞鶴基地)との連携は強まっている。
 一昨年5月に北陸で初めて海自と災害協定を締結以降、ローリーからの艦船給油が可能な伏木港や富山新港を使い、組合員のローリーから直接、船舶燃料の軽油を供給。相互扶助に基づく平時における艦船への燃料供給は、この1年余りですでに5回にも及んでいる。特に昨年9月の県総合防災訓練では、それまでメイン会場などで参加していた同石商が、海自の艦船給油で県の訓練の仲間入りを果たすという役割を担当。自衛艦への給油を順調に行い、県など行政側の信頼を高めた。
 また、災害時を想定した実地訓練は昨年秋、富山市の中核SS・品川商事カンパニー給油所(JXTG系)で行われ、全電源を落としたうえで、家発電機を稼働しブレーカーを非常用に切り換えて、計量機を動かしパトカーに地下タンクから汲み上げたガソリンを給油した。
 こうした災害対応に対する同石商の姿勢は、自衛隊だけでなく、政治への陳情として地元出身の国会議員や県議会自民党に島理事長らが直接面会して要望。さらに富山市議会での一般質問で災害時だけでなく、平時から官公需受注問題として取り上げられるなど、各方面に広がりを見せている。

【石川 自家発稼働手順など確認】
 石川石商・協(吉岡英一郎理事長)は年ごとに災害への備えや訓練に力を入れる。
 2005年の能登半島地震など過去に何度も中規模地震の被害を受けているだけに、中核SSでの実地訓練も最初、中能登町の丸一石油給油所(JXTG系)、続く昨年10月の同訓練も羽咋市の干場産業給油所(同)だった。
 営業を何時間も休止し、停電状態にしての訓練を体験しようと、両会場とも近隣のSS経営者や従業員らが駆け付け、地震発生の想定から諸設備の細かな点検、非常用発電機の作動、緊急車両への給油といった一連の訓練を熱心に学び、組合員の災害への意識の高さを印象付けた。
 また、同石商は県と災害時協定を14年に結んで以降、毎年県主催の総合防災訓練に参加。昨秋、野々市市で行われた訓練では、石油連盟と連携して主会場のテントで『満タン運動』のノボリを掲げ、吉岡理事長をはじめ役員が知事らに災害に強い最新の石油機器を紹介。
 近くの住民拠点SS・協和石油給油所(コスモ系)でも、従業員が非常用発電機を使って緊急車両に燃料を給油。さらに、海上自衛隊への艦船給油も七尾港でオガタ(JXTG系)のローリーが自衛艦に直接給油するなど、陸と海との災害時訓練に同石商は全力で取り組んでいる。

【福井 BCP策定し〝冊子化〟】
 福井石商・協(井田浩志理事長)は、訓練だけでなく大災害に遭った場合の事業継続計画(BCP)を策定、これを冊子化して組合員の全SSに配布した。これは、大災害に見舞われても、燃料供給という事業の継続を可能にする計画を平時から固めておくためのガイドブックだ。同石商が先ごろ、いち早くこのBCP策定に取り組んだのは、一昨年2月に組合員が深刻な影響を受けた「福井豪雪」がある。行政の不手際で同県・三国の油槽所から主要SSまでの“石油の道”が除雪されず大混乱。降雪量の少なかった嶺南地方の組合員がローリーで嶺北のSS支援を徹底して行い、なんとか乗り切った。この苦い経験を基に組合は県など関係機関に次々と要望を出し、行政側もこれに応えて石油の安定供給に協力。災害に備えての『満タン&灯油プラス1缶運動』についても、広報紙などを通じ県民に理解と協力を呼びかけた。
〝最後の砦〟への県や市の対応はいまなお続いている。
 また、昨秋の県総合防災訓練では、大野市の中核SS・大建産業給油所(JXTG系)が停電状態から非常用発電機を使って燃料供給する訓練で参加。組合独自の実地訓練も、大野市よりさらに豪雪地帯の勝山市の中核SS・あおい商事給油所(同)で行われ、多くの組合員が災害時を想定した本格的な訓練を体験するなど効果を上げた。
 同石商の災害に対する姿勢はさらに強まるばかりだ。