論説

災害対応力と安定経営は両輪

 阪神淡路大震災から25年が経過した。自然災害を極力抑える減災対策の基点として、多くの教訓が今日に続いている。今後30年以内の発生確率は、南海トラフで70~80%、首都直下で70%程度と想定され、危険性は日々高まるばかり。近年、地震に限らず自然現象が猛威を振るう中で、石油製品の確保はとても重要との認識が広がり、安定供給への期待が一層高まってきた。個室の避難所にもなるクルマの動力源としてはもちろん、停電への備えも最優先事項の1つと位置付けられた。
 相次ぐ災害を背景に、自家発電設備の導入が急がれている。政府が今年度補正・来年度当初予算案として住民拠点SS数の積み増しをはじめ、社会的重要インフラへの自衛的燃料備蓄推進、緊急配送用ローリーの追加整備などを手厚く措置したのは、その証左であろう。
 日本内燃力発電設備協会が主要製造業者アンケートをもとにまとめた被災地における自家発電設備の稼働・被害状況によると、一昨年9月の北海道胆振東部地震では設置台数1万2752台に対して異常報告は145台で、停電期間の長時間化に伴う「燃料切れ」が目立った。昨年9月の台風15号では最大93万軒が停電し、4万6250台中74台に異常が見られた。この際は設置後20年以上経過したものが多く、部品の経年劣化が想定されることから、オーバーホール等の精密点検や設備更新が望まれると指摘するとともに、燃料切れで停止したことに伴う燃料配管等への空気混入があったため、燃料補給後に空気抜きが必要となる事例が目立った。また、翌10月の台風19号では8万190台中55台で異常が報告され、大半は浸水被害だった。
 災害への備えとして大事なのは、ハード・ソフト両面で円滑な供給体制が維持されることだ。「最も頼りになるのは、だれなのか」。命を守るため、社会混乱を抑制するため、SS店頭に立ち、石油製品の到着を待つ現場に届ける。こうした責務を担う当事者の諸業務ができるだけ捗りやすい状況や環境を整えておくことが肝要で、社会の理解・協力も欠かせない。
 翻って、全石連の対外広報用PRパネルでは『満タン&灯油プラス1缶運動』などと合わせ、阪神淡路大震災における象徴的なSSの姿を紹介している。社会の期待に応え、災害対応力の強化にもつながる安定経営を貫き