全国 組織 連載

石油協会経営実態調査『販売業者の声』㊤ 低マージンが常態化

後継者問題・人手不足深刻さくっきり

 全国石油協会調査統計委員会(遠藤靖彦委員長)はこのほど、2019年度経営実態調査の自由記述をまとめた。SS経営状況やSS経営安定化の阻害要因になっている問題・課題、SS支援策のあり方などに対する販売業者の“生の声”を集めたもので、14年度調査から開始し今回で6回目。各地で依然、地場業者の仕入れ値を下回るような売値が散見される状況に対し、不信感が高まっているほか、低マージンの常態化で、人材確保難や後継者が不在となるなど、石油製品の安定供給確保の基盤となっているSSネットワーク崩壊に危機感が高まっている。“生の声を①低マージン②後継者問題③人材確保難④業転格差⑤不当廉売・差別対価⑥SS支援⑦税金問題⑧災害対策に集約し、上(①~③)、中(④⑤)、下(⑥~⑧)の3回で掲載する。(極力原文に近い形で掲載しましたが、個人や固有名詞などが判明しないよう一部修正を加えています)

 ◆低マージン
 安売り店が進出する中、低マージン販売が常態化してきているが、最低賃金が上がり、働き方改革などに対応するには業界全体が適正なマージンを確保してマージン率を少し上げなければ健全経営(人件費や施設の維持など)ができなくなっていく。(北海道)
 量販特約店の発券店値付けカード増販により、当社優良大口メンバー客が切り替えにより経営が大変厳しい。災害時に、地域住民へ安定供給するためにも、継続できるカード手数料(㍑10円以上)を即時お願いし、後継者夫婦家族に希望を与えたい。(東北)
 ハイブリッド・EVこそ税金を上げるべきだと思う。燃料を使わないということはガソリン税が減少するということになる。ガソリン消費量が減少すれば低マージンのうえに販売量も減少し経営も困難になり人材確保もできず廃業に追い込まれる。マイナス要因しかない気がする。災害時だけ頼られても、人員もいないし限界がある。セルフスタンドしかない地域は大変なことになる気がするし、危険物取扱者の資格の価値が下がる。今後、設備等が老朽化すれば事故の危険性が増える気がする。(関東)
 税金は当たり前に代金に10%をかけて徴収していく。しかし我々は相変わらず、㍑7~8円の粗利益しか取れません。本当に悲しいとしか言いようがない。世の中ポイントにしろ手数料にしても%で物を考えるのに、この業界だけなぜ、何円なんだろう。本当に残念。(中部)
 発券店値付けカードのマージンの低さ。(近畿)
 人材確保が困難な状況である。1つには、ガソリンスタンドで働くことが最終の目標ではなく、「下積み時代」の仕事というイメージや、限りある石油資源なので、未来に不安なイメージがあるように思う。これらを払拭すべく、石油会社、ガソリンスタンドでの仕事が社会貢献、地域貢献、やりがいと責任のある素晴らしい仕事、エネルギー供給拠点、町の生活ステーションとして今後も生き残り続ける産業であり、仕事であることなどをイメージ付ける広報活動・広報戦略をたくさん行ってほしい。(近畿)
 昔から元売の数量志向でマージンを無視してやってきた感があります。小売業の粗利は2割と言われており、200円でも100円でも10円前後の粗利ではとても成り立たない。だからこの25年間でスタンド数が半減したと思われる。円ではなく率でやるべきだと思います。全体がそうならなければ、我が社だけ高くては誰も寄り付かなくなります。石油業界全体で考えねばならない時がきていると思う。(中国)
 低マージンについて、発券店値付けカードの離島での使用をやめてほしい。(九州)
 ◆後継者問題
 当社の後継者は異業種に転向(接骨院)のため後継がいない。(東北)
 社長が1日13時間、他のアルバイトが9時間(2人)でまわしている。アルバイトの時給が最低賃金をやっとクリアする825円で、10月からは850円になった。社長の給料を時給に直すと770円。仕事自体は親から継いだものなので、なんとか頑張っているが、施設の老朽化、社長の年齢(63歳)を考えると、あと2年が限界か。息子は教員、介護師の道を選んだ。(関東)
 後継者と思い入社してもらったが、この業界が先細りで、あまり期待が持てなくて、そのまま続けてくれとは言えない状況である。このまま、この体制でやるより方法がないかと思う不安が多々ある。私どもの努力不足であることも当然だが。(中部)
 ◆人材確保難
 とにかく人材難である。募集をかけても問い合わせが1つもないのが現状である。ガソリン業界事体に魅力が薄いのか、車に興味がないのか。今後、従業員の数が増えないと営業体制をさらに見直さないといけない。(北海道)
 人材確保難で大変困っている。なにか良い方法があればと思っていますが、私どもの力では限界がある。行政の力も必要なのかと考えている。(東北)
 経営者のマージンの考え方の違いかも知れないが、ガソリンスタンドをやっていて本業の燃料でマージンが取れないようでは、次の投資ができず後継者がいても安心して渡せない。(関東)
 一昨年12月からスタッフ募集をしているが、昨年9月に入った時点でも、人材確保ができない状況にある。地域の過疎化、若者の仕事に対しての意識の変化(楽な仕事で稼ぎたい)等が原因と考える。最終的には外国人労働者に頼るべきなのかと思案しているところである。しかし、言葉のハンデや生活習慣の違いなどを考えると、なかなか踏み込めないのが現状だ。(九州)