論説

減販・コスト高時代の経営

 年率3%に迫るガソリン内需の減少。2018年からSS減少率を超えるガソリン減少が全国平均で見られるようになり、残存者利益のプラス効果はほぼなくなっている。新たな燃費基準による低燃費化に拍車がかかるクルマ側の事情も加わる。
 「2050年カーボンゼロ」を宣言する地方自治体が激増中だ。18都府県39市町村が宣言、すでに人口の約4割をカバーする。このうち東京都は30年に新車販売の5割をEV、PHV、FCVのZEVとし、急速充電器を1千基配備する計画を公表、50年には完全ZEV化を目標に据える。災害時におけるエネルギーの最後の砦である燃料油とSSを置いてきぼりにした目標ではあっても、自治体からの類似メッセージが多くなることは確定的だ。この結果、未来指向のSS経営者の多くは、ガソリン減販を前提にした経営に舵を切ることになる。
 この4月から働き方改革の一環で、中小企業も月45時間、年360時間以内の残業上限が適用される。一方で、すでに年次有給休暇の確実な取得に向けた法改正も発効済みで、人手不足という雇用環境はますます強くなっている。スタッフ増が無理なSSは営業時間の短縮や休業に踏み切らざるを得ない。なにより、人手不足を解消しようとするなら、残業代の引き上げ、待遇格差の解消、時給の引き上げ、社会保険の充実など、今後も続く働き方改革への対応には先手を打つべきだろう。
 常時サーバと接続し、メーカーなどが、安全で便利なサービスを提供する通信装置が全新車に装備される時代であり、自動ブレーキや車線逸脱防止システムなどを標準装備するクルマが一般的になっている。非装備車と比較して事故が6割以上も減るというデータがある。センサーが多用されたクルマ向けのOBD車検も21年車から始まる。初回車検は24年からとなる。
 点検整備の多くがメーカーと系列ディーラーに囲われ、板金塗装ニーズも縮小する未来図が見えてくる。SS油外収益の主翼である点検整備も大きく様変わりする予兆にあふれている。
 こうしてSSは収益基盤の縮小、コスト高への道を歩む。
 このSS近未来図への対応法は、現基幹商品である燃料油、中でもガソリンの収益良化でしか補い得ない。お客様の理解を得ながら、年率1円ずつ、粗利を積み上げ続けること。小売粗利の常識である20%粗利へ向けて舵を切ることである。