九州・沖縄 企業情報

大分 荒金登志美さん 湯のまちほそ腕繁盛記㊥

思いがけないことの連続
「頼まれたら断れなかったんです」と笑顔で話す荒金さん(温泉フィットネスで)
「頼まれたら断れなかったんです」と笑顔で話す荒金さん(温泉フィットネスで)

 別府市は大分県の東海岸のほぼ中央に位置し山や高原、別府湾に囲まれ、立ち上る湯けむりは「湯のまち」を象徴する風景だ。人口は県内では大分市に次ぐ11万9千人余りだが約3千人が留学し、国際交流都市としても知られる。最近、海外資本の高級ホテルが開業、大型ホテルの大規模リニューアルが話題になっている。
 一方で、1990年ごろをピークに人口減少が続き、高齢化が深刻な課題になっている。荒金石油店を経営している荒金登志美さんは「温泉フィットネスしんせい」も経営している。夫で県会議員の荒金信生さんと結婚してからSS経営とともに議員の妻として政治活動を懸命に支えてきたが、思いがけないことから経営を引き受けることになった。
 ビル経営をしていた荒金さんの親族の連帯保証人になっていたが、経営不振になって巨額の負債を抱えてしまった。売却しても借金を返すことはできない。「なんとか立て直してくれ」と荒金さんから頼まれた。ビルは2階がプール、3階がフィットネス、賃貸住宅も併設している。プールは温泉で、健康維持にも最適、フィットネスも最新の機器を備えている。若い世代よりもシニアに人気があり、厳しい中で「妻の頑張り」(荒金さん)で経営を続けている。
 「特別養護老人ホームの施設長をやってくれ」と言われたのが8年前。荒金さんは「社会福祉法人・静雲荘」(別府市湯山)の理事を務めていたが、運営がうまくいっておらず、苦情が多かった。「信頼される施設長がいなければ行き詰まる。そうしなれば入所しているお年寄りが気の毒だ。ほかに引き受けてくれる人がいない」と言われて決心した。
 静雲荘には70人の入所者のほかデイサービス、ショートステイもある。職員は60人で、「なによりも大変なのは人手不足」と言う。介護の仕事を希望する若者は少ない。外国人を雇ったこともあるが、国民性の違いもあってうまくいかなかった。「高齢化が進む一方で働き手は減る。これから人手不足はますます深刻になりそう」と、悩みを隠さないが、持ち前の明るい笑顔できょうも、お年寄りたちを支えている。